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主に競技用のロードバイクを取り扱い、販売だけでなくトレーニング用のフィットネススタジオも兼ね備えるスポーツバイクのショップです。 スポーツバイクショップに入り、フレーム、ホイール、コンポーネントからスモールパーツに至る大きさから形まで様々なアイテムが、壁や天井一面に所狭しと陳列された風景を目にすると心躍らずにはいられません。 こうした風景=陳列を極めてシンプル且つフレキシブルに実現するシステムを考案しました。 直径5mmの穴が25mmグリッドで開いているカラーMDF有孔ボード。そして、コンクリート打設時の補強等に用いられる直径4mm、100mmグリッドのワイヤーメッシュ。 普段、建築の現場では出合うことのない、この2つの建材を倹飩(ケンドン)式で嵌め込むだけというシンプルなディテールによって組み合わせました。 両者とも穴やワイヤー、どこにでもアタッチメントやS字フックなどを取付け可能であり、この2つの建材のみで空間を構成することであらゆる場所が陳列可能となります。 シンプル且つ高い自由度を持つ陳列システムで最適化されたこの空間は、無駄をそぎ落とし研ぎ澄まされたパーツを組み合わせて自身の身体に最適なかたちにカスタマイズしていくロードバイクの精神と共通しています。 協働設計:藤井亮介建築研究所
建主ご家族と、大切に育てられているサボテンたちが同居する家です。 敷地は南側接道面以外の三方を隣家が密集していて、まずはこの貴重な南面を開放的にし、サボテンに欠かせない太陽光や風通しをなるべくたくさん家の中に取り込むことが必須でした。一方で、人の住環境としては、道路から無防備になりすぎても住みにくいので、道路レベルと半階ずらした半地下+スキップフロアの断面構成とし、レベル差と奥行によってプライバシーのグラデーションをつけました。そして、その開放的な南面にサボテンの居場所である2階まで続く大きな棚と、さらにその棚に巻き付くようにサボテンの世話スペースにもなる階段をセットで据えました。また、屋上の小さな温室のようなスペースは、直下のダイニングキッチンへと吹き抜けているので、窓を開閉することで、暖気を溜め込んだり、風通しを促したりと、この家全体の気候調節装置のようにも機能します。 こうしてサボテンたちのための環境を整えつつ、そこに人の居心地への配慮を重ねあわせていくことでこの家はできあがっています。 『新建築 住宅特集 2020年9月号』掲載
保育園と絵本カフェ、それに建主である園長先生の住まいが組み合わされた建物です。 敷地は石灰岩の鉱床、武甲山で有名な秩父郡横瀬町。建主の祖父から父へと受け継がれ、今はその役目を終えた築48年の町工場をリノベーションしました。既存建物は建坪40弱の木造+鉄骨トラスの平屋建てで、間口3間の親切妻と1.5間の子切妻のふたつの切妻が並んだシンプルな構成。その骨格をそのまま利用する一方で、園庭に向けて親切妻の屋根を増築・延長させることで、屋内から半屋外、さらに屋外へと連続し、さらに床仕上げと床レベルもフローリングの小上がり、コンクリート土間、デッキ、そして木チップと芝生の園庭へと連続的に変化。東から西、屋内から屋外を横断する多様な遊びや学びの活動を受容する場となっています。 保育園と住まいの境界部分は、空気的には仕切りつつも、住宅の屋根裏部屋から保育園の様子を覗いてみたり、逆に保育園からも切妻屋根の天井が住宅側へと連続していく様子が見えたりします。 職住近接を超え、職も住も学びも育ても、そして地域との関わりも、このひとつ屋根ならぬ、ふたつ屋根の下に展開されています。 協働設計:色景一級建築士事務所 『新建築 住宅特集 2020年6月号』掲載
設計に際し、いただいた要望は、幼い二人の子供たちが日常的に遊びに行けるような手頃な公園が近所にないので、遊び場になるような庭が欲しいということ。それに家のどこにいても敷地内に植える木々や、周囲の家々の庭の緑を借景し、常に緑を眺めながら暮らしたいというものでした。 敷地は、急勾配の坂道を登った袋小路の突き当り。敷地形状は不定形で隣地は崖上で約一層分高い。不動産的にはマイナス要素だらけと捉えられがちな敷地ですが、建主の要望を実現する上では、むしろ好条件に思えました。 袋小路の突き当りは、通過交通が全くないので、子供の遊び場にもなり得ます。最上階をオーバーハングさせ、その下を天井の高いピロティとすることで、道路の突き当り部分が一体となって小さな広場のようなスペースになりました。 また、不定形な敷地形状をトレースした平面形状は、結果として様々な方位に窓を向けることができ、断面的にも各レベルからは、様々な高さにある周囲の緑が見えます。 住まい手は周囲の街を家の延長のように感じられ、街から見れば、この小さな広場までが街の一部のように感じられるような佇まいを目指しました。 『新建築 住宅特集 2019年5月号』掲載
3住戸が積層された木造の長屋。 都市部の集合住宅ではよほど余裕をもった配置としない限り、下階は通風、採光が厳しくなりますが、この計画ではまずは1階をいかに気持ちの良い場所にするか、というところから設計をスタートしました。 敷地周辺は建て込んではいるものの、南北にお隣の大きな庭が隣接していることに着目。水まわりを中央に集約し、8畳間3部屋をずらしながら隣接させることで、部屋どうしを間仕切った状態でも南北通風、採光、そして視線の抜けを確保しています。さらに、断面的にも南にいくほど天井高を高くし、大きな高窓を取ることで陽射しをたっぷりと採り込みながら、お隣の庭からさらに空へと視線が抜けるようになっています。 2階、3階も玄関位置や周辺の建物や庭との関係を注意深く見ながらプランを調整。その結果、各階は同じ平面外形ながらバリエーションに富む3住戸となりました。 『新建築 2017年8月号』掲載
東京都心から電車で20分。周囲には畑や農家然とした大きな家が残る地域にある、元々畑だった分譲地が敷地です。余裕ある周囲の土地利用に比して、この分譲地一画だけ高密度に都市型の3階建て住宅が建ち並び、ややアンバランスな風景になりつつあります。 そこで、バーベキューをするという半外部バルコニーは、煙のことを考えて二層吹き抜けの天井高としたり、短辺方向に大きな開口部を確保するための二重耐力壁の柱をひとつにまとめ、120×240の梁材を使って大黒柱のように太く見せたり、南からの陽光がたくさん取り込めるよう、切妻の外形からはみ出す大きなドーマー窓をつけたり、2階と3階の繋がりと床面積確保を両立させるために、吹き抜けの代わりにスキップフロアをつなぐ階段幅を目一杯広げて読書や子供の遊びの場としたり、玄関外周りに宅配ボックスを設置するために、外部の独立柱を構造で必要な四倍に太らせてポストやインターフォンや配管もついでに組み込んだり…というように色々な部位を大きな寸法で作っていくことで、他の新築住宅と同様に3階建てとしながらも、周囲の農家的住宅の大らかさも同時に兼ね備えた、郊外型3階建て住宅のあり方を模索しています。 『新建築 住宅特集 2018年8月号』掲載
かつては夫婦+子供二人+おじいちゃんの5人家族が暮らした家も、子供たちは巣立ち、おじいちゃんは他界。残された老夫婦二人には少し大きすぎる家となっています。この当初の役割から引退した家を、同じく仕事を引退した老夫婦二人が暮らしやすい家へと改修する計画です。引退後、この家を通じて、これまで以上にいろいろな人と関わりを持つようにしていきたいという施主の意向を受け、少し閉鎖的に感じられる家をなるべく開いていくことになりました。そこでまず、家と同様に少し閉鎖的で暗かった庭を明るく開放的にすることから計画は始めました。そして、その庭へと開いていくように家を改修していきました。(庭計画:笹原晋平/オイコス庭園計画研究所と共同 撮影:山梨徹太郎)